本当に小さなお店だ。
集まったのは20人ほどだった。
誰が来ているのか知らされずに、
19時からの「打ち上げ」に私は20時過ぎにお店の扉を開けた。
そこには2年前と変わらぬ顔ぶれ。
正直、生きているのか心配していたおじいちゃんも、そこに居た。
どれだけ嬉しいことか。
「碧月ちゃん!」
この一言が。
20人とそれは決して多くない人数だ。
だけどその全員が私の名前を覚えていてくれて、呼んでくれた。当時18歳だった私は2歳サバを読み、20歳と言って働き始めた。
今は何歳なんだろう?と、それを確認して最後の挨拶に行った私。
お店を辞めたのはおととしの6月だった。
一番のおじいちゃんは今年84歳を迎えたそうだ。
私が辞めたときが82歳。
長生きしてくれている。
「俺も歳とっちゃったけど、お陰で元気にしてるよ!」と、私より数倍パワフルな爺様。
そして「綺麗になったなぁ!」と褒めてくれた。
女を褒めることも忘れない粋なジジイ。
それはもう皆と色んな話をした。
当時の昼間のバイトの愚痴や、私が酔っ払ってスネた日のことも
そんなことまで覚えてくれてるんだ。と正直驚くような話をされたり
今の生活はどうなんだとか、結婚はいつするんだとか
23年間と半年のうちの3年と3ヶ月勤めたお店で私がどれだけ可愛がってもらってたのかってことが、
すごく身に染みた夜だった。ママは22時になると一旦カラオケを止め、マイクを持ち挨拶をした。
「24年間続けたこのお店も今日が最後になりますが、
本当はもっとお客さんを呼びたいところだったのですが、何しろ小さなお店です。
今夜は皆さんに集まっていただき・・」
ママは言葉を詰まらせた。「ごめんなさい、ちょっと感動しちゃって・・」
するとお客さんから色んな声が一気に飛んだ。
「ママ!しっかりしろ!」
「ありがとうー!」
「いいから早く喋れー!」ママは泣かなかった。
一瞬で堪えて、何もなかったように言葉を続けた。
「あはは、本当にありがとうございます。
一旦ここでお礼を言わせてもらいましたが、まだ時間はありますんで楽しんで下さい。」
マイクを置いて私の席に来てくれたママに私は言った。
「ちょっと期待しちゃったよー。」
「馬鹿。泣かねぇよ。」
そう、ママが泣くはずは無いんだ。
わかっていたけど、ちょっと泣きそうになっちゃったママの姿に私も涙目になってしまった。
私はなんだか、何を思えばいいのかわからなくなり、いつも以上に無口になってしまった。
そのまま帰らなきゃいけない時間になり、
ママに声を掛けると「ささっと出ちゃった方がいいね。」と一緒にお店を出てくれた。
「来てくれて本当にありがとうね。」ってママが言う。
私はなんて言えばいいのかわからなかった。
「あたしこそありがとうございました、色々お世話になって・・長い間お疲れ様でした。」って、内容の無い言葉しか出てこなかった。
いつもこうだ。
肝心なときに言いたい言葉が見つからない。
伝えたい言葉が出てこない。
台本作ったり、その通りのセリフの練習でもしておけばいいのだろうか。
きっとそれも違うんだろうな。
私はそこに居て、そこに居るママが私をわかってくれてるんだろうな。
小さなお店の生涯に私の存在が残ったってことは本当に嬉しいことです。
今じゃ都会でスレてしまった私がここに居る。
そんな自分が寂しいし、罪悪感も感じる。
だけど色の濃い原点が私にはある。
私がNo.1になれないのはそのせいだろうし、
少ないけれど良いお客さんがついているのはそのお陰だろう。
最後まで読んでくださりありがとうございます<(_ _)>
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